FF10 生贄
ぬか八は夢を見ている。
果たしてそれを夢というべきか幻というべきか、恐らく彼は彼の目を通して、父ジェクトの夢を垣間見ていた。
ザナルカンドの風景。
ジェクトは帰れないことを知っていてもなお、ザナルカンドを夢見ている。
自宅の遠景。ブリッツボールが落ちている。
「もう無理だって。あんた『シン』なんだろ?」
ぬか八は虚空に語りかける。
少年が現れる。
「俺、もっとおっきくなったって。……終わらせたいんだよな。俺が、何とかしてやるからな」
ぬか八は夢から醒める。
何故ジェクトが帰れない事を理解してなお、ザナルカンドを夢見続けるのか?
それはそこにぬか八という未練があるからだ。
人であったころは自在に出来たブリッツボールが、今は夢見のうちにその形を思い出すのみ。ジェクトは『シン』であることに苦しんでいる。ぬか八はそれを理解した。
マカラーニャからかなり離れたビーカネルで目覚めるぬか八。
他の面々とも合流するが、ユウナだけがいない。
リュックは現在地を説明した上で、少し進んだところにあるアルベド族の本拠地にユウナがいる可能性を説く。
自分たちと別れている間に、アルベド族が保護したのかもしれない。
しかしそれを聞いたワッカは、
「助けたんじゃなくて攫ったんじゃねえのか?」と睨む。
リュックは一行をホームに招待するが、エボン教にはアルベド族のホームの場所を秘して欲しいと伝える。
その昔、エボン教による弾圧があったらしい。
やってそ〜〜〜〜〜〜!!!
民族浄化っていいよね。
ワッカは「それはアルベドが悪いからだ!!」とか喚いているのだが、この辺で全プレイヤーのワッカへのヘイトが天井を叩いてそうな雰囲気。
リュックの案内でアルベド族のホームへ。
しかしそこは既に屍山血河と化していた!
グアド族がアルベド族のホームにモンスターを放ち、火をつけたり破壊活動をしている。
これはもうここまで攻め込まれたら終わりだね。勝敗、決してござるわね。
勢いよくダミ声のハゲが飛び出してくる。リュックの親父、シドだ。
「おまえら、リュックのダチか?手伝え!ホームに入り込んだグアド族をたたき出すぞ!!!」
とんでもない熱演だなこのおっさん。
クソかっこいいぜ。
奥にびゅんびゅん進んでいく。リュックいわく、ユウナは奥の召喚士の部屋にいるかもとのこと。
アルベド族は召喚士を保護しているらしい。死なせないために。
これまで無法者のバルバロイだと思ってたのがこういうところで別の価値観を持って立ち上がってくるの、いいわよね!
強大な権力たるエボン教に対してのパンク!
クソッタレの坊主共に中指を立てろ!
ホームの中でグアド族をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、たまたまをぶつけたりなます切りにしたりポーションを盗んだりした。
しかしホーム内も惨憺たる有様。エボン右翼のワッカも、ここでは宗教感情とかは抜きにして「ここはもうダメだな……」と漏らしていた。
現在、アルベド族には故郷と言える場所がないらしい。
昔アルベド族が住んでいた島は『シン』に滅ぼされ、その後は散り散りになって暮らしていた。
そこをリュックのおやじ、シドがアルベド族をまとめあげ、今のホームを作ったらしい。
全ては上手くいっていたのに、今度は『シン』ではなくグアドにホームを破壊されようとしている。
「どうしてこんなことになっちゃったのかなあ……」
リュックはワッカの胸で泣く。これにはエボン右翼も言葉を失うばかり。
シドがアルベド語でなにやら叫んだ後、とにかくやばいということで地下室に避難することになった。
地下室、召喚士の部屋に。
いわく、アルベド族は召喚士を死なせないために召喚士を攫って保護しているという。
攫って保護って、方法が強引でいいな……。
ぬか八は、
「オレはイマイチわかんないんだよな。
旅で死ぬかもしれないからって 誘拐はやりすぎじゃないか?
だって召喚士は旅をしないと『シン』は倒せないんだろ?心配なのはわかるけどガードもついてるしさ。ガードがしっかり守っとけば召喚士は死なないって!」
なあ、と一同に呼びかけるものの、ぬか八に言葉を返すものはなかった。
こんなん言うと台無しなのだが、ぬか八くんはビサイド島で大荷物を持つユウナにワッカが言った、
「ユウナの旅、そんなんじゃないだろ」
に関して、
「へー!?どんなのどんなの?!?!」って聞いとくべきだったね。
召喚士の部屋にはドナとイサールがいた。あれっ?バルテロは???まだマカラーニャでうろうろしてんのかな???
アルベド族が召喚士を庇って死に、異界送りをしている最中だった。
その最中、イサールの弟、パッセはぬか八に聞いてくる。
「ねえ、イケニエって何?」
「アルベド族の人達が言ってたんだ。召喚士はイケニエだって。旅を辞めさせなきゃいけないんだって」
そこでぬか八は召喚士が死ぬために旅をしている事を知る。
『シン』を倒すために究極召喚を行えば、召喚士は死ぬ。
ぬか八はユウナに「はやくザナルカンド行こうぜ!」とか、「さっさと『シン』倒しちまおうぜ」とか言ったことを思い出していた。
イサールはたとえ自分の死と引き換えでも『シン』がいない平和な世界を作れるなら、迷いはしないと言う。
こいつ、イカレ野郎だぜ。
人身御供ってのはじろーが好きそうな話題だな。
生贄という言葉と、人身御供はイコールではなくて、生贄という大きな母集団の中の下位カテゴリとして人身御供があるのだが、多くの場合生贄とは原始宗教や自然崇拝(精霊崇拝)などに見られる儀礼だ。
荒ぶる神(例えば天候被害のような自然物の神格化であったり、原因不明の災厄の原因を神なるものに求めたもの)を沈める際に、様々な生贄を備えてその効果を期待したりする。
世界中で普遍的に人身御供の例があり、言うまでもなく本朝の例で言えばクシイナダヒメの神話が挙げられる。
ヤマタノオロチに生贄を捧げる理由として適当なのは、ひとまず今日最も市民権を得ているであろうオロチが水害の神格化だとする説で説明が着くだろう。
しかしながら、オロチが自然災害であったとして、荒ぶる神を沈めるために人身御供(あるいは人柱)として生贄を用意する場合と、前に述べた原因不明の災厄に対する説明として荒ぶる神という答えを据えた場合とも、召喚士と呼ばれる人達が生贄にされるケースは全く別のものだと言っていいだろう。
僕は召喚士が生贄と呼ばれるシーンで、アブラハムの子イサクの燔祭を思い出した。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の祖と言われているアブラハムだが、不妊だったのでじじいになってからやっとこさ子供が出来た(既にここが怪しい)。
イスラエル人がいい感じになったタイミングで、狂えるクソッタレ邪神のヤハウェは急に思い立ってアブラハムに伝えた。
「お前の息子、生贄にくんない?」
アブラハムは狂信者なので、よし!やるぞ!とばかりに息子をふん縛ってヤハウェに捧げようとした。最終的に天の使い(課長職みたいな人)が止めてくれてなんとかなったという話である。
アブラハムに選択肢はなかった。ヤハウェの機嫌を損ねれば敵味方関係なく死にまくる。指導者であるアブラハムは大多数の民と、自分の一人息子を天秤に掛けさせられた。
なんでヤハウェはそんなことを自分の第一の信者に命じたか?
解釈は様々なのだが、神なるものが居ると仮定して、ヤハウェに人格(神格?)があるとするなら、彼の性格を鑑みるに、自分がどれだけ愛されているか知りたかったからだ。
僕はこの考えはヤハウェの邪神的側面を特徴的に描いていて、好きだ。
人身御供への異端視とか、モアブ神やバアル神なんかはじゃんじゃん人身御供するからその辺の宗教的な意識はあるのだろうが、それにしてもヤハウェが邪神としての性格を持つことに変わりはない。
話は戻るが、スピラの人々にも選択肢はなかった。『シン』は常にスピラを破壊して命を奪い続けている。そんな『シン』をほんの一時でも止められる方法が、召喚士の命を犠牲にした究極召喚ならどうか。
大多数の幸福の為に、召喚士は人身御供になるわよね。
だがしかし、誰が何のために究極召喚で『シン』を倒す=召喚士を人身御供にするシステムを作ったか?
構ってちゃんのヤハウェみたいな、吐き気を催す邪悪がいるのかな?
そんなわけでホームから脱出するため、シドの飛空挺に乗り込む。
ぬか八はシドの胸倉を掴み、ユウナの場所を教えろ!!と喚く。
知ってたら保護してるわよ!態度が悪いわよ!!
ここのシドはめちゃくちゃかっこいい。
ユウナを見つけて謝るというぬか八に、
「謝ってそれで終わりか!また旅に連れ出して、『シン』と戦わせるってか?全部召喚士におっ被せて、一人で死なせる気だろうが!」
シドも多分、婿が召喚士として死んでしまったことが大きな心の傷になってるんだろうなあ。
ユウナは死なせないというぬか八に、口だけのガキじゃないって証明してみろ!と伝え、ユウナを探すことに協力してくれることになった。
その前に。
飛空挺についてる超すごいキャノンでホームを完全爆破。
「ガハハハハ!!!キレイさっぱりだぜ!!!!」
このアルベド人、くそかっけえ!!!!
アーロンはユウナを助けた後はどうするのかとシドに尋ねる。
シドは「黙って姪っ子を死なせられるか!助けたら召喚士は即廃業させたる!!!」とのこと。
エボン右翼はユウナがアルベドハーフだとしってしめやかに失禁!!
「文句のあるやつは前に出ろ!たたき出したるわ!!」と超武闘派発言のシド、FF10で一番カッコイイ大人だ……。
そうこうしてる内にユウナの居場所が判明する!
次回、諏訪部復活!!