かぜはく電脳曼荼羅

玄秘学、食文化、ゲーム、生と死に非常な関心があります。

一人TRPG、悪霊の家

これはクトゥルフTRPGのシナリオ「悪霊の家」をかぜはくが仕事の休憩中とか休みの暇なときに一人でやったかなしいかなしいリプレイです。
一人遊びの帝王かぜはくはこういうソロゲーをしたりして暇を潰しています。

何万回とやってんだよこのシナリオはよ。

 

このお話はフィクションです。
ダイスロールの数値などは実際にあったあれですが、結果如何はダイスの女神の機嫌によるので、もしご自分が登場してひどい目にあってもダイスの女神を恨んでください。彼女はおあつらえ向きにハンドルがついています。あしからずや。

 

なお画像は五分とかでつくった。ゆるせ。

 

 

一、
 
深夜十一時……兵庫県篠山市の某所。
空には満天の星、皓々たる月輪。澄んだ空気は、月光をさらに冷厳なものにする。
あたりの民家に人の気配はまったくなかった。惜しむらくは、この静謐さを破壊せんとする高速道路上の車駕の群れ。
近づく安っぽい排気音、扉の閉まる音……それとほぼ同時に、一軒の家屋の、二回の一部屋に明かりが燈った。やがて家屋の中から二人の男が現れ、軽自動車から降りた男を招き入れた。
すぐに扉は閉まり、階段を上る、三人分の足音が響いた。続いて、小さな足音が幾つか。
 
深夜三時。机の上にはクリームソースとフォークの残った皿と、鳥の骨が大量に放り込まれた別の皿。ビールの空き缶、飲み干されたワインなどが乱雑に並べられている。
一人は既に眠りこけていた。布団も敷かず、座椅子を枕に寝息を立てている。
「絶対風邪ひくぞこれ。茂木くん。茂木くん」
作務衣姿の男が眠りこけている男を揺さぶるが、返事は帰ってこない。
金髪の男が毛布を茂木と呼ばれた男にかけてやり、自席に座りなおした。欠伸をかみ殺して、回されたコントローラを握る。
「パンツ撮るゲームっつうか、魚釣るゲームだよなこれ」
金髪の男は、気だるそうに眼鏡をずらして目を擦った。
「淡々とボタン押すだけの釣りでクソつまんねえしな。はやくパンツ撮りにいこうぜ」
クソゲーのコントローラ番から解放された作務衣姿の男は、手近にあったウイスキーをグラスに注ぎ、ちびりと飲んだ。
「あ、そういえば。かぜはくさんが好きそうな話あるんだけど」
金髪の男はそういいつつコントローラを回す。
「うわもうこっち来た……好きそうな話とは?」
言いつつも指は既に単調な作業を繰り返している。
「久しぶりにオブリビオン行為しよか!」
「えっ?今から?さみいよーー」
わざとらしく震えて見せる。
「んなわけないだろ。明日三人とも休みやし、かぜはくさんと僕と茂木くんの三人で行こう。場所も見つけてあるんやで」
 
暫く待つと、金髪の男、はニャんが鍵の束と数枚の紙片を持ってやってきた。
「実は、オブリビオン行為というかクエストなんやけどね。これ、篠山の郊外にある屋敷の鍵。僕の知り合いがその屋敷の持ち主なんやけど、ちょっと立て込んでてね。今はやりの田舎暮らしを奨励する計画で、畑付きの家とか古民家とかを市が貸し出しとるのは知ってるやろ。それで一年前まで人が住んでたんやけど……実はいわくつきの物件だったらしくて」
作務衣姿の男、かぜはくは鍵の束を矯めつ眇めつして、心ここにあらずといった様子で聞き返す。
「いわくつき?匂い付きじゃなくてか?」
「なんでも、悪霊が出るらしい」
「なんだと!」
途端にかぜはくの目の色が変わり、俄然興味を惹かれるといった様子で続ける。
「何を言っているんだね?悪霊?馬鹿馬鹿しいにもほどがあるぞ。そんなものは弱い人間の心が作り出す幻だ!妄想だ!悪霊だかなんだか知らんが、そんなもんの為に前の住人は逃げ出したのか?だせえ!居もしない幽霊なんぞ何を恐れる必要があるのかわからんな!幽霊!そんなやつが出るのは何よりそいつが弱いから悪いのだ。もしそんな奴が仮に?実際に?万が一?この世に存在したとしたら?俺様の塩をまぶした聖属性のパンチで成仏させてくれるわ。南無三!」
「まあそれなんやけど。権利者はなんというか、その悪霊とやらの成仏をさせてほしいらしい。安全にまた人に貸せるようになって、金儲けができたら万々歳という感じみたいやね」
「アホくせえこと言ってんなあ……つまりは居ないってことを証明してやればいいんだろ。まったく、そんなものの答えは既に明治に井上円了が出してるだろうが。その逃げ出した奴に俺様が講義してやる」
熱の入ったかぜはくをはニャんがなだめる。
「ま、それもええかもしれんな。前に住んでた人、というかその一家の内二人は、今は精神病院におるらしいで。話そうと思えば話出来るはずや」
 
 
二、
 
雲居の合間から差し込む曙光は、地上に降り注ぐよりも先に、無残にもかき消された。濃霧だ。篠山の盆地を埋め尽くす白波のごとき丹波霧は、朝ぼらけの光よりも早く、この隔絶された小天地を支配している。しかし篠山に住む人々にとって、この濃霧は恐怖の対象では決してなかった。秋の訪れを、木々の装いに、明らかな朱が満ちていくことの、物言わぬ知らせであった。尤も、且つて抱いた恐怖という感情を、その根源的な白き闇が齎す不安を、人々は忘れているだけに過ぎないのだが……。
「やべえ!家帰って歯磨きしなきゃ!」
一番に目覚めたのはかぜはくであった。しかし、自分が家から持ってきた毛布と、その枕元にあるお泊りセットをひっ掴んで、その必要がないことに気が付いた。
ほぼ同時に、家主はニャんがもぞもぞとベッドから起きだした。
「何時寝たっけ?よく覚えてないなあ」
「これ茂木君!探検にいくぞ!」
茂木はかぜはくに揺り起こされて、意味も分からず目をぱちくりさせた。
「お、おはようございまーす……探検?」
「話すと長くなるんやけどね。実は昨晩は話の途中に寝てしもたんやけど、途中まで進んでたし、茂木君にも説明しよう」
 
三人は昨夜のまま放置されている食器などを急いで片づけ、再び件の鍵束と数枚の書類を囲んで座りなおした。
議長を務めたのははニャん。唯一話の細部を知るためであった。彼は書類をめくりながら、よどみなく話を進めていく。
「まずは今まであったことから話していこか。まずは二千十三年。二年前やね。曲谷(まがりだに)さん家族が今から探検に行く屋敷に引っ越してきた。一年ほどしたとき、父親の曲谷勝男(まがりだにかつお)さんが屋敷の中で大きな怪我をして、すぐに頭おかしなって病院に入れられたらしい」
「曲谷勝男か……覚えにくい名前だから俺様はこのおっさんに「ヴィクトリ男」という名前をつけるぜ」
かぜはくが茶々をいれた。
「んですぐ奥さんのほうも気が滅入ってきてこれも入院。残された二人の子供たちは大阪府の親戚に預けられたらしい。正気じゃない人間のうわごとらしいから信ぴょう性はどうかわからんけど、「燃える目をした化け物」を見たとか。専ら二階にある部屋の一つで心霊現象が起こって、勝男さんの怪我というのもそれに関係があるらしい」
「その曲谷さんたちはなんでそんないわくつきの物件を買ったんですかね」
茂木が疑問を口にする。
「さあなあ。知らずに掴まされたか、べらぼうに安かったか。安くで田舎暮らしがしたかったんかね」
「安いのは確かに、びっくりするほど安い。一戸建てでこのお値段だし……」
はニャんが二人の目の前で書類をぺらぺらさせた。
「安いな!俺様がこの家に悪霊がいねえって照明出来たらこの家貸してくれる?交通の便はちょっと悪いけど、車なら問題ないし二階建て庭付き畑付きでこれは破格だぞ」
「えっ?悪霊?心霊現象っていうか悪霊?悪霊が出るんすか?自分そういうのはちょっとお」
目に見えて同様している茂木は悪霊という言葉に難色を示す。裏返して言えば、彼はそういった類のものを信じる性質であるということだ。
それに対して異を唱えたのはかぜはくである。彼は無類の玄秘学派であったが、それゆえに幽霊だとか、神仏だとかの実在を否定する立場にあった。
「何を言うのかと思えば。そんなものは茂木君。君の心の中にしか存在しないのだ。仮に存在したとしても、俺様がぶん殴れば悪霊だろうが妖怪だろうが死ぬであろう。ワハハ」
「いるかいないかはさておき、それを確かめに行くというのも面白そうやろ?ま、家主はいるいないにかかわらず、あの家の安全を確かめてほしいんやて。いるならいるで追い出せば安心ということだし。追い出せるのかしらんけど。しかもこの案件、なんと解決したらお金もくれるらしい。とにかく行ってみよ!」
そうはニャんが締めくくると、鍵の束、屋敷の見取り図、懐中電灯などを揃えて準備にかかった。
 
 
三、
 
はニャんの愛車、アコードが重苦しいエンジン音を響かせながら、しばらくアイドリングした後、静かに停止した。
目の前に現れたるは、木造二階建ての、テラスとベランダが一つになったようなやや大きな建物であった。日本家屋というよりかは、西洋風の建物を模して造られたような印象を受ける。家屋のすぐ後ろには山。これは多紀連山と呼ばれる京都府から篠山市丹波市にまで伸びる山々の、その連なりである。堅牢な城壁、または断崖絶壁の岸壁を思わせるようなその山々が、篠山を盆地たらしめている。山々からは未だに靄が吹き出し、濃霧を天鵞絨の襟巻のようにして佇んでいる。
家屋の周りには、畑と庭が広がっているが、どちらも荒れに荒れ、生い茂る草の所為で屋敷から少し離れれば、ちょうどそれらは垣根のような役割を果たすことであろう。カーテンのかかった窓は武骨で、なんの飾り気もない。それがまた、外部のものを強く遮断しているかのような印象を三人に与えた。
 
茂木、目星ロール(90)……9(成功・スペシャル) 目星チェック
 
「この人気のなさはすごい不気味な……話に聞いてたよりなんか気持ち悪くない?いやー、きついっす」
茂木はやはりこの建物に何らかの不吉な印象を抱いているようである。あたりを見て回ってみたが、結果的にそう漏らした。
しかし茂木は恐怖ゆえか、敷地内を見て回った末、いくつかの点に気付いた。生い茂る垣根状の雑草や、山、森などに囲まれたこの家の、秘匿性。事によっては建物の中で何かが起こったとしても、――そして運よくこの屋敷の近くに人が通りがかったとしても――この家の様子は、外からはまったく判らない。更に茂木は敷地内を見て回り、畑のそばにある東屋や、勝手口などを見つけた。
 
はニャん、目星ロール(85)……94(失敗)
 
「入り口の鍵は開けてみたけど、なんか開かへんね。閂でも中からかかってるんやろか。入れる場所を探さんといかんね」
はニャんはとりあえず鍵束を鞄に戻し、代わりに煙草を取り出して火をつけた。
 
かぜはく、幸運ロール(60)……26(成功)
 
茂木とはニャんが一服していると、おもむろに風切り音が聞こえてきた。同時に、声。
「おおい、君たち。いいものがあったぞ!イヤーッ!」
かぜはくが両手で鋤を振り回しつつ、柄を一扱きして構えた。
「これで何かしら出てもズタズタに出来るな。そこの崩れかけた東屋にいろいろあったぞ。鋤とか鍬とか。鉈とか鋏とか」
「かぜはくさんそういうの好きやなあ……どっからともなく拾ってきよる」
はニャんは飽きれつつも、やや錆のある鉈を受け取った。
 

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三人は連れだって、勝手口からの侵入を試みる。南京錠と差し錠二つをはニャんが開けると、扉は一人でに開いた。
「ひいっ」
「立て付けやろ!とにかく中に入ってみようや」
室内は、塗り込めたような闇であった。今しがた開けた勝手口の扉はあけ放ってある。現段階では唯一の明り取りであり、脱出口でもあった。
 
茂木、目星ロール(90)……12(成功・スペシャル)
はニャん、目星ロール(85)……86(失敗)
かぜはく、目星ロール(25)……34(失敗)
 
「とにかく、電気のスイッチを探そう」
はニャんがそう言い、三人は手探りであたりを触り始めた。
「あっこれじゃないっすかね?」
茂木が発見し、幾度かスイッチを叩いて見るが何の反応もない。勝手口にある蛍光灯も引いてみたが、同様であった。
「もしかして電気もう来んようにしてしもたんかも。懐中電灯で進むしかないな」
はニャんは携えていた懐中電灯を付け、手元にある見取り図を照らした。
「勝手口のある部屋だから……ここか。出たら一本通った廊下がある。一階にはあと五つの部屋があるみたいやね」
「手分けする?」
かぜはくがニタニタ笑いながら言う。
「冗談じゃないっすよ!一緒にいきましょ」
 
三人は廊下に出た。
「しかし馬鹿に暗いな。まだ朝っちゃ朝だぞ。なんでこんなに暗いんや?」
「さっきの部屋は山側だったから日が当たらないからにしても、廊下に出てもこの暗さは異様っすよね……庭側の部屋から行きます?」
手近な、向かいの部屋に入ることとなった。
 
「変なにおいすんな……食べ物が腐ったような、饐えたような」
はニャんが呟き、あたりを懐中電灯で照らす。
「キッチンみたい。調べてみようぜ」
 
茂木、目星ロール(90)……49(成功)
はニャん、目星ロール(85)……22(成功)
かぜはく、目星ロール(25)……99(失敗・ファンブル)
 
「ほうほう……レンジ、オーブン、冷蔵庫。この辺なんかは電気入れたらまだ使えそう。冷蔵庫はちょっと開ける勇気ないっすけど」
茂木はそのあたりを物色している。
「まだ食べられるもんもいくつかあるな。缶詰とか、パスタ。レトルト食品なんかは賞味期限まだまだある。だからといって食うわけではないけどな。かぜはくさんじゃあるまいし」
はニャんは食料品置き場を探っている。
「おっ!いいもん見っけ。ワインだ。品種はサンジョベーゼ、バルベーラ……曲谷さんはイタリア赤ワインが好みだったんかね。ちょっと味見してみよう……あっダメ。くさい」
かぜはくは目の前にワインがあるのに飲めないことによって深い悲しみを負った。
 
かぜはく、アイデアロール(55)……21(成功)
正気度-1……かぜはく正気度98
 
「野菜を食い散らかした後があるな……そしてこの匂い。鼠の糞の匂いか。夜中はさぞかし大運動会であろうなあ」
「あ。これ見てみ。なんでこんな暗いのかって、こんなことしとるからや」
はニャんは壁を照らして指さした。続いて茂木がそれに触れて、
「ベニヤ板?そうか、ここは窓だったところか。内側から窓を塞いでたんすね」
「引っぺがしてやる!」
 
かぜはくVSベニヤ板
対抗ロール(80)……49(成功)
 
「イヤーッ!」
かぜはくは鋤を差し込んで、ベニヤ板を引き剥がしてしまった。途端に光が差し込み、キッチンを明るく照らす。
二人の白い眼を背中に、かぜはくは「いんだよこまけえことは」と言った。
「でも順番に引き剥がしていけば、探索はしやすくなりそうっすよね」
「そうだろうそうだろう。どうせまた売りに出すときはこんなもん剥がすんだから、俺様が前もって剥がしておいてやっただけのことだ。俺様なんか悪いことした?いいことしたよね?」
「しかし何で内側から窓を塞ぐ必要があったんや?曲谷さんは昼間でも家じゅう電気つけとったんかな?」
キッチンから隣の部屋へは、そのまま繋がっていた。廊下に出ずとも、そのまま隣、そしてそのまた隣まで通じているのである。キッチンの窓から明かりが入ったせいか、その隣の部屋に移動しても少し明るさがあった。
 
かぜはくVSベニヤ板
対抗ロール(80)……64(成功)
 
「オアー!」
またもやベニヤ板は無残にも引き剥がされた。
「かぜはくさん一応借家なんやから、もうちょっと丁寧に……」
この部屋は食堂のようであった。大きなマホガニー製のテーブルがあり、椅子は七脚。三人分の食事の用意がされているが、手が付けられた様子はない。
「メシ作っといてなんで食わんのじゃ。三人分ってことはヴィクトリ男が入院した後の三人用か。嫁さんも入院したとか言うてたが、食うものも食わず病院にぶち込まれたんか?」
かぜはくはスープ入れを開け、中身が腐っていることを確認して蓋を閉めた。
次の部屋でも、やることはそう変わらなかった。しかし……
 
かぜはくVSベニヤ板
対抗ロール(80)……85(失敗)
 
渇いた音を立てて、これまで探索をともにしてきた頼れる相棒、かぜはくの持つ鋤の柄が折れた。
「あっ!やってもた!まあ古くなってたしな……王にふさわしい装備ではなかったのだ。次さがそう」
結局この部屋では窓から明かりを取り入れることが出来ず、隣室から届くわずかな光のもと操作を進めることとなった。
「まあなんとか見えるし大丈夫やろ。懐中電灯もあるし」
「かぜはくさんはむしろ武器がなくなったのが寂しいんじゃないんすか」
この部屋は居間であることが判った。これまでの部屋は洋室であったが、この部屋は和室である。ありふれたテレビ、座卓、座椅子、床の間には仏壇、神棚などがあった。
 
茂木、目星ロール(90)……02(成功・スペシャル) 目星チェック2
はニャん、目星ロール(85)……18(成功)
かぜはく、目星ロール(25)……21(成功)
 
はニャん、アイデアロール(75)……55(成功)
かぜはく、アイデアロール(55)……53(失敗)
茂木、アイデアロール(50)……01(成功・スペシャル) イデアチェック
 
「一つの部屋に神棚も仏壇もあるのは別に変ったことやないけど、なんか気になるな。そっちの専門は僕やないから任せるけど」
はニャんが部屋中を詳しく見て回ると、部屋の調度品自体はそう古くなく、曲谷一家が使っていたものと判った。
「金仏壇に南無阿弥陀仏。真宗系大谷派だな。……神棚はなんだこれは。新興宗教か?下らんな!」
かぜはくは神棚を詳しく調べるため、中身を物色し始める。
「そんなぽいぽい捨てて……バチ当たるっすよ」
もてては怪訝な顔でかぜはくが捨てた護符、数珠などを拾い集める。
「知るか。俺様の方が強い」
かぜはくはまったく気にする様子もなく、散らかすだけ散らかして興味を失ったようだ。
「結構古い護符だなあ。神代黙想会?聞いたことないな」
「ふーん。そんな暴走族みたいな名前の宗教だったのか。それにしても仏壇の方が新しいのに、神棚周りの神具の方が圧倒的に多いな。この手入れのされてなさから見ても、曲谷さんは熱心な宗教家ではないようだが」
やがて部屋を一通り調べ終わると、はニャんが声をかけた。
「ほな向かいの部屋を調べてみよか。悪霊がいるとか言う割にはなんも出んやんけ!」
「そらそうよ。そんなのいないもん」
見取り図を見て、最も玄関から近い山側の部屋に入った。
 
茂木、目星ロール(90)……00(失敗・ファンブル)
はニャん、目星ロール(85)……41(成功)
かぜはく、目星ロール(25)……35(失敗)
 
「あ痛っ」
部屋に入るやいなや、茂木は置いてあった箱に足をぶつけた。
 
HP-1……茂木HP13
 
「雑多にものが置いてあんなー。物置みたいやね」
はニャんが懐中電灯であたりを照らす。
壊れた自転車、箱、何も入っていない水槽……壁側には戸棚があるが、これは板を打ち付けられている。
「いかにも開けてくれって感じの戸棚だな!何が入ってるのか知らんが」
「必要があったから封じたんやろ……ん?」
 
はニャん、アイデアロール(75)……71(成功)
かぜはく、アイデアロール(55)……85(失敗)
茂木、アイデアロール(50)……81(失敗)
 
「必要があるから封じた?この戸棚もせやけど、さっきの部屋の窓も必要があるから封じたんやろか?しかも外側からではなく内側……内側から封じる必要があったんか?曲谷さんが?」
はニャんは何事か考えている。
「しかし開けられるような道具もないし、ここを調べるのはどっかで装備品を調達してからっすね」
この部屋の探索はこれで切り上げ、次の部屋にいくことになった。
山側の三つの部屋のうち、真ん中の部屋。
「暗いな……この部屋は他の部屋とまったくつながってないし、扉を開けたままにしても光が届かへん。足元とか気ーつけや」
「さっき茂木君足ぶつけたしな」
「面目ない」
 
茂木、目星ロール(90)……68(成功)
はニャん、目星ロール(85)……9(成功・スペシャル) 目星チェック
かぜはく、目星ロール(25)……55(失敗)
 
「なんもねえな」
「なんもないっすね」
「びっくりするほどなんもない……あっ」
三人がガラクタまみれの物置を物色していると、はニャんが何かを見つけたようだ。
「工具箱か。+ドライバー、-ドライバー、モンキーレンチ、スパナ、小さいバール……使えるのはこれくらいやろか?」
「ほーう。これがあったらさっきの部屋の板が外せるな。何が入ってるか確かめてみようぜ」
かぜはくはニタリと笑う。
「こいつまーじ……いいんすかねえ」
茂木はかぜはくを白い目で見ながらも、最後に部屋を出て扉を閉めた。
最後玄関に近い物置にやってきた三人は、手分けして板を外した。
「一体何が出てくるんですかねえ」
「そらもう超レアの財宝とかよ」
やがて完全に板が外され、かぜはくが勢いよく戸棚の戸をあけ放った。
「なんじゃ何も入っとらんやないか」
「いや、何か立てかけてある」
はニャんが懐中電灯を向けると、
「古いノート?一、二、三冊。題はないけど名前が書いてあるな……荒木公一?達筆すなあ」
途端。にわかに地鳴りがして、倉庫内のあらゆるものが音を立てて揺れはじめ……最後に大きく揺れたかと思うと、戸棚と入り口の扉が、音を立てて閉まった。
「く、くそビビったあ……最近多いよね」
「家具が揺れるとかかなり大きかったみたいやな」
「えっそういうのじゃないんちゃいます?悪霊とちゃいます?扉とか閉まったんすけど!」
茂木は見るからに怯えている。
「いやまあ確かにビビったけど。うんこもれるかと思ったけどさ。ただの地震やろ。それよりそのノート、何が書いてあんのか判らんが明るいとこ行ったら読んでみようぜ」
かぜはくは扉を開け、廊下に出た。
「やだなあ、不気味だなあ」
茂木が汚いものを持つようにノートをぷらぷらさせていると、かぜはくはそれを引っ手繰って自分のボディバッグに突っ込んだ。
「さーて、一階は全部調べたな。残るは二階と地下。どないしよか?」
はニャんは見取り図をひらつかせる。地下は見るからに狭い。一階の一部屋分の広さに、二つの部屋がある。対して二階は三部屋ある。見取り図にはその全てに、「寝室」と書かれている。
「狭いなら地下を先に潰しとくか?なんかマップ埋めとかんと気がすまんみたいなの、あるだろ」
「男の子はそういうのあるよね」
そういうことになった。
廊下を突き当りまで進み、上り階段の差し向かいに地下への道がある。
地下への扉は南京錠一つと、差し錠二つで施錠されている。はニャんが鍵束を取り出し、それらを開錠していった。
「地下だからきっとすげえじめじめしてるぜ。オバケが出るかもな。ゲヘヘ」
かぜはくは茂木に向かってニタニタ笑いながら軽口を叩く。
「や、やめーや」
茂木は後ずさりし、殿に立った。
懐中電灯を持ったはニャん、かぜはく、茂木の順で地下へと降りていく……。
「えらい暗いし、なんかギシギシ言う怪談やなあ」
 
茂木、DEX×7ロール(91)……56(成功)
はニャん、DEX×7 ロール(49)……93(失敗)
かぜはく、DEX×7 ロール(49)……34(成功)
 
先頭を行くはニャんが、階段の半ばで次の段を踏んだ時、その足は段を突き抜けた。木製の階段は弱くなっていたのだ。
 
ダメージロール1d6=6 はニャんHP8
 
「うあああああああ!」
そのままバランスを崩したはニャんは、一気に階下へと落ち……したたかに背中を打ち付けた。
「おいっ大丈夫か!」
かぜはくと茂木はすぐさま階段を下りて駆け寄った。はニャんはすぐに起き上ることが出来ず、その場で呻いている。
「随分ひどくやったみたいだな……今日はこれまでにしとくか?」
「そ、それほどでもない。処置するから手伝ってくれる?」
二人ははニャんの肩を持って立たせ、はニャん自ら腰の具合を見た。
 
はニャん、応急手当ロール(70)……25(成功)
1d3=2 はニャんHP10
 
「ちょっとはマシになったかも。でも家に帰ってはよう湿布とか貼った方がええかもしれん。引き揚げよか」
その時である!
 
-1
シークレットダイス1d3=3
命中ロール(85)……47(成功)
1d4+2=6  茂木HP7
 
「あ゛っ……?!あ、ぐ、ひ、ひゃあああああああ」
茂木が大声をあげてその場に蹲る。その背中には……短刀!
「何!どこから……誰かいるのか!」
かぜはくが叫ぶと、短刀は茂木の背中からひとりでに抜け……空中で翻り、かぜはく目がけて飛来した!
 
かぜはく、アイデアロール(55)……18(成功)
 
かぜはくは近くに落ちていたゴミ箱のアルミ蓋と、はニャんの取り落した鉈を手に取り、構えた。
 
命中ロール(80)……24(成功)
かぜはく回避ロール(48(18+30))…16(成功)
 
甲高い金属音がして、短刀は宙を舞い、地面に突き刺さった。
続けざまに、
 
かぜはくこぶしロール(81)…26(成功)
 
かぜはくは鉈を振り被って横殴りに短刀を打ち据え、根元から折った。
残心!未だかぜはくはゴミ箱の蓋と鉈を手に、暗闇を睨み付けている。やがて返す刀がないと判ると、彼はそれらを足元に捨てた。
はニャんが震える手であたりを照らすも、人影はない。
「や、やっぱり何かいるんすよ!悪霊が、悪霊がやっぱり…!」
茂木は恐怖して大声を上げる。
かぜはく、はニャんも先ほど茂木の背中に突き立った短刀を見た。誰の手によるものでもなく、空中を自在に翻り、飛来する刃を。
 
はニャん、応急手当ロール(70)…17(成功)
1d3=3 茂木HP10
 
はニャん、アイデアロール(75)……97(失敗)
かぜはく、アイデアロール(55)……46(成功)
茂木、アイデアロール(50)……36(成功)
1d4=1
1d4=3
 
はニャん正気度98
かぜはく正気度97
茂木正気度96
 
「かぜはくさんどうなんすか?悪霊、いるのいないの」
「いる……かも。いや、きっと何か仕掛けがあるんだ。罠、そういったものを誰かが仕掛けていたんだ。そうでなければ、こんな、こんな」
三人の息は荒い。誰が何というでもなく、その場を引き上げ、各自療養することとなった。
 
回復ロール
2d3=2+3=5 はニャんHP14(MAX)
2d3=1+2=3 茂木HP14(MAX)
 
成長ロール
茂木目星1d10=9
茂木目星1d10=6
9+6=15 茂木目星(99)
茂木アイデア=8 茂木アイデア(83)
 
はニャん目星1d10=6
はニャん目星(91)
 
変更点
茂木 
正気度96
目星99
 
はニャん
正気度98
目星(91)
 
かぜはく
正気度97