かぜはく電脳曼荼羅

玄秘学、食文化、ゲーム、生と死に非常な関心があります。

陰獣

じろーがくれた陰獣読了した!

 

乱歩がこれまで書いてきた作品をトリックを、まとめまくって自分で自分をパロるとかいう手法であった。

 

理想とする自分と実際の自分(世間から見られている自分)の対比であったようにも思うなあ。

 

 

でもそれより、もう一遍の『蟲』!

これがめちゃくちゃよかった。僕ごのみの話であった。

 

社会的弱者で対人能力に問題ある主人公が、友人の恋人に横恋慕してストーカー行為を繰り返す話なのだが、僕こういうの大好きなんだよ。

人間として、オスとしても完全敗北した主人公はさてどうするか。その後の成り行きは最近読んだ本(死体入門)にも繋がっていてとても面白かった。

みじめでどうしようもない、どん底の、腐ったような弱者の弱音や愚痴や妬み嫉みの渦巻が、文字の本流となってその無念さがありありと伝わってくる。

 

カイジの鉄骨渡りにも似ているね。

金持ちどもが安全なところから鉄骨渡る債務者どもを(高い金を出資して)見ているのは、自分の安全な境遇と、後のない弱者の対比もあろうが、もっとも彼らカチグミ・サラリマンが求めているのは窮地に立たされた弱者どものそのうめきが見たいのだ。

妬み嫉みが。

自分たちに向けられる羨望が。

 

みじめな底辺の叫び声って、本当にそそるよね。