夜叉ヶ池/天守物語
よみました。
戯曲読みやすいね。幽玄な情景描写は鏡花の持ち味の一つだと思うけど、これはこれでよい。
構造的な話をすれば、二作とも俗世の人間と、聖なる妖怪変化の対比がテーマになっているのだが、鏡花自身の人間の味方に関わるようで興味深い。
聖なるものはすなわち、祟りを為すものとしての二面性を持っている。夜叉ヶ池では蛇蠍のごとく憎みつつも夫婦愛に嫉妬もする白雪が、しかして結局自らの為に尾の無い猿を水底に沈めてしまい、天守物語では富姫が人間に恋し、自分のものにする為に手を尽くすが、蒙昧な人間によってその体を害される。
どちらの作品でも、人間は徒党を組んで神秘的存在に(自ら仕立て上げておいて)害を為す愚かな存在として描かれている。
でもこれって批評性が高まるよね。
いいような悪いような、都合がよくなってしまうのはあまりよいとは思えんのだが、戯曲としての様式美なのかも。