かぜはく電脳曼荼羅

玄秘学、食文化、ゲーム、生と死に非常な関心があります。

ウマ娘を見ましたのでチラシ裏に感想を書きなぐるやつです

ウマ娘のアプリが話題なので手慰みにやってみるかという気持ちになった。

ウマ娘についての予備知識はマジでほとんどなくて、ゴルシちゃんが以前から界隈でオモチャにされてたから興味が出て初めてみたというのもある。

 

競馬ならびに競走馬については全くの無知と言ってもよく、勝たずに儲けるの代名詞になってるハルウララとか一世を風靡した超有名馬の知識しかなかった。

したがって、没入感を高めるために隙間時間でアニメを見るかということになった。

 

にしてもウマ娘って馬主の機嫌も損ねられないし、厄介系フェミニストは絶対に敵に回すしで物凄く難しい文脈を持ってるよね……。

 

ウマ娘についてきらら系の系譜かと思ってたんだけど、実際には激アツのスポ根だったことを前述しておく。

 

主人公のスペシャルウィークちゃん(以下スペちゃん)の第一印象としては、「なんだか好きになれなさそうだな」だった。

いつも僕はこういうメインヒロイン的キャラクターはあまり刺さらない。

ただその印象は一話の最後で完全に払拭された。

「日本一のウマ娘になってお母ちゃんに見てもらう」という夢に向かってひたむきに走り続ける若者ってだけでおじさんにはもう涙無しには見られないような眩しすぎる存在なんだよね……。

彼女の事を完全に好き――というよりは応援したい!という気持ちになったのは、レースで負けたあとも微かに見えている可能性の光明を感じて笑顔を浮かべられるところで、ただ僕は一人の応援者として、スペちゃんを応援したくなった。

好物の人参ハンバーグにつきましては声出して笑ったよ。

僕個人としては人参が多すぎるハンバーグってあんま好きじゃないんだよね。人参の甘さで肉の香ばしさを阻害してしまうというか……。

でも彼女が自宅で食べてる人参ハンバーグはそういうのではなく、でかいハンバーグに人参が1本丸ごとぶっ刺さっていてよかった。

 

 

ゴールドシップ

インターネットで散々オモチャにされているのだが、このキャラアツいぞ!!

彼女って破天荒で自分の法律で生きてて、自由という快楽の依存者なのだが、その実多くの人を助けようとしていて、実際に人を救っている。

過去、仕事にマジになれなかったトレーナーは他のウマ娘たちに「私たちちゃんと指導して欲しいんで!」と言われて干されてしまい、ちゃらんぽらんのヒモ野郎みたいになって過ごしていたのだが、その時最後までチームに残ったのがゴルシちゃんだった。

こうした方がいいよとか、これがよくなかったとかそういうことは一切言わず、ただ彼女はトレーナーに向かって「オセロしようぜ」とだけ言った。

この一言でどれだけトレーナーが勇気を持てたことだろう。

失意のうちに道を踏み外す前に踏みとどまれたのは、間違いなくゴルシちゃんのおかげだといえよう。

二人の間には不思議な信頼感があり、トレーナーが各ウマ娘に的確な走り方のアドバイスをする際も、

「ゴルシ!お前は……好きに走れ!」

「ウィーッス」

だった。かわいいね。

 

あまりにも突拍子もないことするけど、それは彼女の中には理論的な筋道が作られている。

練習中に急に海に行ってヤシの実をカチ割ったりサバイブしはじめたと思ったら、「これはあえてレースから遠ざかることでレースへのフラストレーションを溜めてレースしたいって気持ちを盛り上げてんだよ」と懇切丁寧に説明してくれる。

ゴルシちゃんは誰に対しても距離が近いんだよな……自由主義の僕は非常に彼女のことを気に入っているぞ。

 

サイレンススズカちゃん

スペちゃんに異常な執着をされるウマ娘

復帰戦はマジで泣いちゃったよ。夢がもう一度見られて本当によかった。

スペちゃんに執着されつつ、その執着が最初は良くない方向に向きつつあった。だけれども彼女たちは自分たちの目標に向かって邁進する心を取り戻したことで、彼女は自分の恐怖心という大きな障害を乗り越えて本来以上のの強さを手に入れることが出来た。スペちゃんの執着は彼女にとって救いでもあったのだ。

さりげなくトレーナーの車では絶対に助手席に座るの可愛いね。

ところでこれはウマ娘の話とはあんまり関係ないんだけど、彼女は安楽死の例として非常に有名であるね。

 

 

グラスワンダーちゃん

スペちゃんに異常な執着を見せるウマ娘

ごはん食べながらサイレンススズカちゃんのことを好き好きいうスペちゃんのことを睨む。

翌日のレースでスペちゃんのことをぶっこ抜き、「私はスペちゃんだけを見て走りました……スペちゃんは私の事見てくれましたか?」というシーン、僕の好きなやつ!!

 

サクラバクシンオーちゃん

この子のことはゲームで好きになったが、併記しておく。

委員長キャラでそれだけでは全くピンとこないのだが、類を見ない溌剌としたキャラクターで、暑苦し……ひたむきでかわいい。

ッッッッッハイッッッッ!!!!!!!サクラバクシンオーですっ!!!!!!!!ッタァーーーー!!!!!ホリャアアアアアアーーーッッ!!!!!ハイ!!!わかりました!!!!バクシンです!!!!ヒャアアアア!!!!バックシーン!!!!!スピード+委員長力=バクシン力です!!!!!えっへん!!!!!!!!!

こんなキャラ。

彼女は長距離が走りたいのだが、全く適正がないので1200mのレースを三本走れば3600m走ったことになって長距離走ったのと一緒だよ!という詭弁に騙されてずっと短距離を走らされている。

 

トレーナー

このアニメで一番好きなキャラクター!!!!

ツーブロで後ろ髪にしっぽを作っており、無精髭を生やした三十路がらみの男。

常に棒付きキャンディを咥えており、甘党の様子。

基本金欠なのだが、毎回ウマ娘たちに人数分おやつを奢ってあげたり、ご飯に連れて行ってあげたり、手料理を振舞ったりしているので常に金欠。

バーで同僚に「あちらのお客様からです」をした後に金をせびっているのは非常によかった。

同僚トレーナーは彼に好意を向けている節もあるのだが、そこがまたエモであるね。

 

これはフロイトが言うことを元に導き出した私個人の考えだが、こういう常にタバコとか飴ちゃんとか草とか咥えてるキャラは口唇欲求が強く、愛情を受ける面で何かしらの問題を抱えているといってよく、したがって受けである。

 

でも彼はトレーナーとして本当にすごく、非常に感銘を受けた。

トレーナー室は彼が事務する部屋なんだが、たくさんのソファや明らかに彼の趣味ではなさそうなかわいいクッションがたくさん置いてあって、ウマ娘たちがなんでもない時に大挙して押し寄せ、語らうのだろうなということが想像出来る。

彼女らに彼が信頼されていることの証左であって、また彼はそのようなウマ娘たちが集える場所を作ろうとしている。

レースに負けたスペちゃんに寄り添って、一緒に悔しさを叫ぶシーンなどもまたをかし。

 

アニメにおける合宿の回は本当に素晴らしかった。

彼は自分のチーム「スピカ」を二つに分けた上で、「馴れ合い禁止」というルールを掲げた。

合宿終了時には対抗戦を行うという。

近頃チーム内に広がりつつあった、悪い意味での和気藹々としたムードを払拭するためであった。

しかしながらこういう策は上手くやらなければチーム内の対立を産んでしまい、ギスギスした空気を作って人間関係をズタズタに破壊してしまう。

 

常にイチャイチャしてるゴルシちゃんとメジロマックイーン、ライバルを自認しているウォッカダイワスカーレット、スペちゃんとサイレンススズカを分けて、競い合わせるようにした。

 

このチームで最も大きい問題だったのは、かつてのチームのエースであるサイレンススズカの故障、ならびにその故障からメンタル的な問題で立ち直れずにいることと、そんなサイレンススズカに執着する現エーススペちゃんはサイレンススズカを気遣いすぎることでレースに集中出来ず、思うように成績を挙げられていないことだった。

 

サイレンススズカは普通に走っても問題ないのだが、恐怖心や、ほかの皆が自分に合わせていることが申し訳ないという煩悶から全力を出し切れずにいる。

ここでもゴルシちゃんはサイレンススズカに「一人で走っててもつまんねーだろ!一緒に走ろうぜ」と声を掛けるなどしていて、こいつ頭わいてるけど本質的には良い奴なんだなという感じ。混沌/善かな。

 

そらチームの中で怪我してるやつがいたら皆そいつのこと気遣ってしまうよ。それが正常なことですよ。それ自体が悪いことでは決してない。

 

ただ、アスリートとしてはそれでは駄目なんだ。

 

チームスピカはトライアスロンで雌雄を決することとなった。

一着になったウマ娘にはトレーナーがポケットマネーで高級(?)ホテルのスイーツビュッフェをおごる!とのこと。

 

トレーナーの意図を理解してかしないでか、各ウマ娘たちは我先にとゴールをめざす。

 

しかしサイレンススズカに異常な執着を示すスペちゃんだけは、常にサイレンススズカを気にかけながら走ってしまう。

サイレンススズカがちょっと自転車をガシャってしまった時などは、「スズカさんんんん!!!!」などと食い気味に心配して駆け寄り、助け起こそうとしてしまう。

ところで馬が自転車に乗る意味あります??

 

 

そこにトレーナーが現れて、スペちゃんを強く窘める。

お前はレースの途中で立ち止まるのかと。

サイレンススズカにも怪我をした時に誓ったもう一度レースに出るという約束はなんだったんだと。

「お互いの為になりたいなら、お互いをライバルだと思って高めあえ」

こんなセリフは、アニメが始まる前のちゃらんぽらんなトレーナーからは決して出なかったセリフだよな。

 

トレーナーはスペちゃんに言う。

「スズカにレースに出て欲しいなら、お前は本気で走れ。今度はお前が背中を見せる番なんだ」

 

話変わるけどフレネミーって居るじゃないですか?

友好関係を示してきつつ、実は敵対者だというやつです。

スパルタ教育とスパルタ教育の皮を被ったフレネミーの違いってここにあるのだなあということを理解した。

このトレーナーは二人に前を向かせるために、今回はスパルタ教育の手段を取ったんだな。

スパルタ教育の目標が定まっていて、トレーナーはその目標を達成するために働きかけた。

こういう策はチーム内不和を産む危険性もあるし、自分がスパルタに徹し切ることの苦しみもある。

この手段をとるにあたって、トレーナーの深い愛情と信頼がウマ娘たちに対してあったのだということを理解して僕は泣いてしまったよ。

 

「日本一のウマ娘になる」という夢を思い出して走り出すスペちゃん。そして恐れを振り切って全力でかけ出すサイレンススズカ

彼女らの克己心に、僕は目が覚める思いだった。

 

僕はこれまでウマ娘たちの夢に向かって走り続ける姿に勇気づけられるとともに、失ってしまった情熱を惜しんでいた。

今の僕は楽に生きることばかりを考えていて、彼女らのように挑戦して生きることに命を燃やす喜びを忘れてしまっていた。

楽に生きることこそが持続可能性のある幸福の追求だと考えていた。

しかし彼女らの己を奮い立たせる表情を見て、僕も昔彼女らと同じ表情をしていたことを思い出した。

 

持てる全ての力を尽くして、自分の描く理想へとたどり着くため、ひたすら自らを鍛え上げていたあの喜びを!

 

 

なんだかんだあって全員スケキヨになり、全員リタイアしたのだがトレーナーは全員にスイーツビュッフェを奢っていた。

やっぱ善良な人間なんだよなこいつも。

 

フィクションであっても信頼と愛情でもって二人を立ち直らせたトレーナーを僕は心から尊敬する。彼もまたこの物語で成長している一人であることが判った。

 

いい話だった。